研究所紹介
設立主旨
経済的困窮や利益目的ではないにも関わらず、自分を抑えられずに窃盗行為を繰り返してしまうクレプトマニアは、窃盗症や病的窃盗とも呼ばれる精神疾患のひとつです。通常、窃盗行為の多くは行為者にとって何らかの利益獲得を目的として行われます。
しかし、クレプトマニアは、窃盗する物そのものに強い関心があるわけではなく、むしろ窃盗行為の過程の中で経験するスリルや達成感を得ることが動機付けとなり窃盗を繰り返す傾向があります。近年の日本でもマスメディアなどに多く取り上げられているこのクレプトマニアは、通常の窃盗行為と同様の刑事罰を受けることが非常に多くあります。
現在、医学的治療や心理学的支援を用いた再犯予防については、司法の場で充分にかつ真剣に検討されていない状況です。クレプトマニアによる窃盗行為に対しては刑事罰による矯正教育的アプローチに頼ることがほとんどです。
これらの再犯予防を進めるにあたって、行為者自身の問題の改善が非常に重要となります。
クレプトマニアに影響を及ぼす要因には、行為者本人が抱える様々な苦悩や困難、病理が関係しており、刑事罰や矯正では充分な再犯予防に繋がらないと考えられています。
仮に、刑事罰だけを受けて社会復帰しても、クレプトマニアによる問題は解決しておらず、再びその影響を受けて再犯を繰り返すという悪循環に陥ることが多くあります。
こうした現状を鑑み、クレプトマニアに対する社会内での医学的・心理学的治療を提供し、それらを通して再犯を予防することを目的として当研究所を設立する運びとなりました。
クレプトマニアの治療やサポートをご希望の方々、ご本人を支える家族の方々、クレプトマニアに関する弁護活動を行われている弁護士の方々、こうした方々を支援されている医療・福祉関係の方々など多くの皆様のお役に立てるよう取り組んで参ります。
研究所長紹介
特定非営利活動法人 性犯罪加害者の処遇制度を考える会 代表理事
性障害専門医療センター センター長
一般社団法人 男女問題解決支援センター 代表理事
専攻分野:司法精神医学、神経科学
平成4年3月京都大学工学部卒業
平成11年3月京都大学医学部卒業
京都大学医学部附属病院精神科、法務省京都医療少年院、厚生労働省国立精神・神経センターなどを経て現職。
内閣府性犯罪被害者支援に関する検討委員会委員。
内閣府性犯罪被害者等のための総合支援モデル事業審査委員会委員。
警察庁 ストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会委員。
大阪府青少年健全育成審議会委員。
福岡県性暴力対策検討会議委員。
大阪府子どもを性犯罪から守る条例改正検討懇話会委員。
京都大学医学部精神科非常勤講師。
京都大学博士(医学)、精神科専門医、精神科指導医、精神科判定医。
第65回世界生物学的精神医学国際会議優秀賞、第21回日本パーソナリティ心理学会優秀賞、第5回作田明賞優秀賞。
著書:「私の処方」「Psychology of Gambling」「現代のエスプリ―嘘の臨床・嘘の現場―」「The Handbook of Social Neuroscience」「子どもの攻撃性と破壊的行動障害」「法と心理学の事典」「精神疾患の臨床と前頭葉」「こころの臨床a’・la・carte 精神鑑定と責任能力」「こころの科学―うその心理学―」「今日の精神科治療ガイドライン―非社会性人格障害―」「精神神経疾患と脳画像―反社会性人格障害―」「ストーカー病―歪んだ妄想の暴走は止まらない―」「平成29年度研修版 日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題(日本弁護士連合会 編)」「ストーキングの現状と対策」「情動と犯罪ー共感・愛着の破綻と回復の可能性ー(編)」「子どもへの性暴力は防げる!ー加害者治療から見えた真実ー」など
訳書:「HCR-20-暴力のリスク・マネージメント-」「サイコパス―冷淡な脳―」「PTSDハンドブック―科学と実践」など